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情シスがいない会社の、セキュリティの最低限 ― 最初にやる5つだけ

従業員5〜50名・IT専任者がいない会社向け | 更新日:2026年10月29日

盾と鍵で守られるオフィスのPCのイラスト

大きな会社だけが狙われる時代ではありません。警察庁サイバー警察局のまとめ(『令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』、2026年9月公表)では、2026年上半期に警察へ報告されたランサムウェア被害は123件と、統計を取り始めてから半期で最も多く、被害の約6割は中小企業でした。侵入の入口は、VPN機器などのネットワーク機器が約半数を占めています。ウイルス対策ソフトを入れているだけでは足りない一方で、最初から完璧を目指す必要もありません。実務の現場で『ここだけは外さない』という最低限は、5つに絞れます。ここでいう『情シス』は、社内のIT専任者を指します。

先に結論 — やる順番はこの5つ

  1. バックアップを、普段のネットワークから切り離した場所にも置く
  2. 社長と経理のアカウントから、二段階認証を入れる
  3. 普段使いのアカウントから管理者権限を外す
  4. 通信機器とソフトのアップデート担当を決める
  5. パスワード管理の道具を会社で1つに決める

全部を一度に終える必要はありません。各項目に「最初の一手」と「完了の目安」を付けたので、上から1つずつ状態を確認してください。

最低限の5つ

1バックアップ ― しかも「切り離した場所」に

ランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求する攻撃)への備えとして、被害を小さくするうえで重要な対策の一つがバックアップです。ただし、同じネットワーク上にあるバックアップは、一緒に暗号化されるおそれがあります。

同じまとめでは、復旧にかかった費用が1,000万円以上という回答が全体の6割に上りました。備えの中心は、被害を防ぐことと同じくらい『戻せること』にあります。

  • 重要なデータは2か所以上に置く
  • そのうち1つは、普段ネットワークから切り離した場所(外付けドライブの付け外し、または世代管理ができるクラウドバックアップ)に
  • 年に1回を目安に「実際に戻せるか」を試す
最初の一手

止まったら困るデータを書き出し、保存場所が何か所あるかを確認する

完了の目安

復旧テストをした日と、戻せたデータの範囲を記録できている

直販で十分な場合

データ量が少なく、担当を決めて運用を回せる会社。外付けドライブやクラウドバックアップの直販で足ります。

販売店・専門業者に頼むべき場合

基幹システムや顧客データが多く、止まったら業務が止まる会社。設計を間違えると「バックアップしていたのに戻せない」が起きます。

2二段階認証 ― 社長のアカウントから

パスワードが漏れても、二段階認証(ログイン時に追加の確認を入れる仕組み)があれば、不正ログインのリスクを下げられます。優先順位は「メール」「クラウドストレージ」「会計・給与」の順。まず社長と経理担当のアカウントから入り、全員分はその次で構いません。端末を替えたときの復旧方法も、社長が分かる場所に残しておきます(パスワードそのものは共有しません)。

最初の一手

社長と経理のメールアカウントで、二段階認証が有効かどうかを確認する

完了の目安

対象アカウントの一覧で、二段階認証が有効になっていることを確認できている

直販で十分な場合

ほとんどの場合、道具は不要で、各サービスの設定変更だけで完了します。

販売店・専門業者に頼むべき場合

アカウントの数自体が把握できていない場合。まず棚卸しから手伝ってもらう価値があります。

3管理者権限を全員に配らない

普段使いのアカウントに管理者権限(ソフトのインストールなどが自由にできる権限)があると、ウイルスが入ったときの被害範囲が広がります。日常用と管理者用のアカウントを分け、管理者のパスワードは社長か担当者だけが知っている状態にします。例外的に管理者権限が必要な作業は、誰が・いつ使ったか分かる運用にしてください。

最初の一手

全員分の日常用アカウントに管理者権限が付いていないか、一覧で確認する

完了の目安

従業員の日常用アカウント一覧で、管理者権限の有無を確認できている

直販で十分な場合

PCが単体で動いている会社では、設定変更だけで足りることがほとんどです。

販売店・専門業者に頼むべき場合

サーバーや共有PCの運用が絡み、権限の設計を間違えると業務が止まる会社。

4アップデートを「後回し」にしない仕組み

攻撃の入口になりうるのが、古いままの機器やソフトです。特にインターネット接続に使う機器(ルーターやVPN機器)は、更新が出たら早めに適用する担当とタイミングを決めておきます。更新できない古い機器がある場合は、放置せず、買い替えか専門業者への相談を検討してください。

この項目を後回しにしない根拠として、公的な統計も挙げておきます。警察庁サイバー警察局「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年9月公表)によると、ランサムウェア被害への侵入経路はVPN機器が約半数を占めていました。インターネット側に置いた機器の更新を後回しにしないことは、入口をふさぐための具体的な対策の一つです。

最初の一手

ルーター、VPN機器、業務で使う主要ソフトを一覧にし、担当者を付ける

完了の目安

機器一覧に「最終確認日」と「次に確認する日」が入っている

直販で十分な場合

一般向けルーターの入れ替えや、ソフトの自動更新設定で足りる範囲。

販売店・専門業者に頼むべき場合

VPNや拠点間接続など、更新の失敗が業務停止につながる機器を触る場合。

5パスワードの使い回しをやめる道具を入れる

「使い回すな」と言うだけでは現場は変わりません。パスワード管理ツール(パスワードを安全に保管し、使い回しを防ぐサービス)を会社で1つ決めて入れると、ルールが道具で回るようになります。アカウントは会社管理にし、退職時にアクセスを止められる状態に。共用アカウントを残す場合は、利用者と変更タイミングを決めてください。

最初の一手

主要サービスのログインが、個人のメモや覚え書きに散らばっていないか確認する

完了の目安

主要サービスのログインが、個人のメモではなく会社の管理下にある

直販で十分な場合

パスワード管理ツールは月額制のSaaSが中心で、メーカー直販の申込みで十分な場合がほとんどです。

販売店・専門業者に頼むべき場合

既存アカウントの移行や社員への定着支援まで、まとめて任せたい場合。

費用の考え方

この5つは、多くが「今あるものの設定変更」か「月額制のサービス」で足ります。月額だけ見ず、初期費用とランニングコスト(月額×12か月=1年分)を分けて比べてください。あわせて、設定や確認を誰が何時間行うかも、自社の作業コストとして見ます。高い製品を1つ入れるより、5つの抜け漏れを減らす方が、対策のバランスを取りやすくなります。

→ 比較の見方(初期費用とランニングコストで分ける) → かんたん費用計算で試す

後回しでよいこと(最初は)

  • 高額な監視サービスの契約(最低限ができてからで十分です)
  • 全社員向けの分厚いセキュリティ規程(まず5つの運用を回す方が先です)

ただし、すでに不審なログインやデータの暗号化など、事故が起きている疑いがある場合は、通常の導入手順を進めず、契約中の販売店・メーカーや専門業者へ先に連絡してください。

まとめのチェック

  • バックアップが、切り離した場所にもある
  • 社長と経理のアカウントに二段階認証が入っている
  • 普段のアカウントに管理者権限を付けていない
  • 通信機器のアップデート担当が決まっている
  • パスワード管理の道具が決まっている

よくある質問

ウイルス対策ソフトを入れていれば十分ですか?

それだけでは不十分です。バックアップ、二段階認証、管理者権限、アップデート、パスワード管理は、それぞれ別の弱点を埋めるものです。どれか1つではなく、5つの有無をそろえて確認してください。

5つ全部を、一度にやらなければいけませんか?

一度に終える必要はありません。まずバックアップと、社長・経理アカウントの二段階認証から確認し、残りを担当と期限を決めて進める方法でも構いません。

費用はどのくらい見ればよいですか?

製品や契約によって変わるため、この記事では金額を断定しません。候補を比べるときは、初期費用と月額×12か月のランニングコストに、自社の設定・確認作業の時間も加えて見てください。

販売店や専門業者に頼むべきなのは、どんな場合ですか?

基幹システムや顧客データを多く扱っている、止められない業務がある、復旧手順を自社だけで決められない場合は、設計や復旧テストを専門業者に頼む価値があります。逆に、データ量と対象アカウントが少なく、担当と運用を決められる場合は、設定変更や直販サービスから始められます。

事故が起きているかもしれない場合は、どうしますか?

この記事の順番で導入を進めるのではなく、通常業務の変更を止め、契約中の販売店・メーカーや専門業者へ連絡してください。状態によって初動が変わるため、自社だけで初期化や削除を進めないでください。