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診断事例 — 見積もりの読み解き

従業員15名の会社の見積もりを読み解く ― PC入れ替えとWi-Fi、セキュリティの一括見積もり

診断事例シリーズ | 更新日:2026年10月29日

※ 架空の事例です。実在の会社・販売店・製品・見積もりとは関係ありません。金額はすべて説明用の仮の数字です。
見積書に赤ペンで注記を入れるイラスト

販売店から見積もりをもらったけれど、高いのか安いのか、自分では判断できない。情シスのいない会社では、よくある話です。この記事では、従業員15名の会社が取った「PCの入れ替えとWi-Fiの刷新」の見積もりを題材に、売る側ではない立場から、どこをどう見るかを順番に解説します。

会社の前提条件

  • 従業員数:15名
  • 見積もりの対象:ノートPC5台の入れ替え、Wi-Fi機器と工事、保守、セキュリティとバックアップの月額サービス
  • PCの用途:事務作業が中心(文書作成、メール、会計ソフトの利用など)
  • 困りごと:社員が増えるたびにPCの準備が後手に回ることと、「ネットが遅い」という声が出始めたこと
  • 判断に使った情報:提示された見積書の内容と、用途についてのヒアリングのみ

提示案の内訳

まず、費用を「初期費用」と「ランニングコスト(月額×12か月=1年分)」に分けて並べ替えます。見積書の合計金額だけを見ると判断を誤りやすいので、このサイトではいつもこの形に直してから見ます。

区分項目金額
初期費用ノートPC 5台 × 198,000円990,000円
初期費用初期設定 5台 × 33,000円165,000円
初期費用Wi-Fi機器・工事280,000円
初期費用 小計1,435,000円
ランニング保守18,000円/月
ランニングセキュリティ・バックアップ 2,500円/人/月 × 15名37,500円/月
月額 小計55,500円/月
ランニングコスト(月額×12か月)666,000円
1年目の合計(初期費用+1年分)2,101,000円
総評

条件に対して高めに見えます。理由は3つあります。PCの構成が用途に対して上位寄りであること、初期設定費の中身が分かれていないこと、セキュリティとバックアップの役割分担が見えないことです。順番に見ていきます。

気になる点

1PCの構成が、用途に対して上位寄りに見える

提示されたPCは1台198,000円です。用途は事務作業が中心ということでしたので、もう1ランク下の構成でも足りる可能性があります。もちろん、長く使う前提で余裕を持たせているのかもしれません。見積書だけでは分からないので、「どの仕様が、どの作業のために必要なのか」を確認する価値があります。

2初期設定費が一律の単価になっている

初期設定は5台 × 33,000円で、合計165,000円です。ただ、何をどこまでやってくれるのかが見積書からは読み取れません。アカウントの作成やデータ移行まで含むなら妥当な範囲かもしれませんし、開梱と起動確認だけなら高めです。自社でチェックリストを使ってできる作業と、任せた方がよい作業を分ける余地もあります。

3セキュリティとバックアップの役割が分かれていない

月額37,500円の「セキュリティ・バックアップ」という項目は、名前だけでは中身が分かりません。ウイルス対策とデータのバックアップは別の役割ですし、今すでに契約しているサービスと重なっている可能性もあります。対象範囲と役割分担の説明を受けてから判断すべき項目です。

代替案を置いてみる

では、構成を見直すとどうなるか。同等を目指した再構成の例を置いてみます(単価は説明用の仮置きです)。

区分項目金額
初期費用ノートPC 5台 × 158,000円790,000円
初期費用初期設定(要点のみ委託)55,000円
初期費用Wi-Fi機器・工事210,000円
初期費用 小計1,055,000円
ランニング保守 8,000円/月 + セキュリティ・バックアップ 1,500円/人/月 × 15名30,500円/月
ランニングコスト(月額×12か月)366,000円
1年目の合計(初期費用+1年分)1,421,000円

提示案との差は、1年目の合計で680,000円です。内訳は、初期費用の差が380,000円(PC 200,000円/初期設定 110,000円/Wi-Fi 70,000円)、ランニングコストの差が月25,000円 × 12か月で300,000円です。

ただし、ここは大事な注意点です。代替案は、保証やサポートの範囲が提示案と同一ではありません。この680,000円は「削減が確定する額」ではなく、「条件を確認し直す価値がある額」と捉えてください。安い方に寄せればよい、という話ではありません。

販売店への確認質問

この見積もりなら、発注の前に次の3つを確認します。そのまま送れる文面にしておきます。

  1. 「PCの型番を1ランク下げた場合の見積もりもいただけますか。用途は事務作業が中心です」
  2. 「初期設定の作業内訳を教えてください。どこまで含まれていますか」
  3. 「セキュリティとバックアップ、それぞれの対象範囲と役割分担を説明してください。既存の契約と重なる部分はありますか」

販売店がこうした質問に具体的に答えてくれるかどうか自体も、取引先を選ぶ判断材料になります。

結論

条件を確認してから進める見積もりそのものを否定する必要はありません。確認すべき点が3つ見えているだけです。質問への回答次第では、提示案のまま進める判断もあり得ます。大事なのは、合計金額の印象だけで決めず、初期費用とランニングコストに分けて、根拠を持って決めることです。

自分の見積もりで確認したい3つ

  • 初期費用とランニングコスト(月額×12か月)に分けて並べ替えたか
  • 一律単価になっている項目の「作業内訳」を聞いたか
  • 月額サービスの「対象範囲と役割分担」を言葉で説明してもらったか