トップ › カテゴリ:勤怠・労務 › 記事
勤怠・労務の選び方 ― 打刻方法より先に「給与計算と連動させるか」を決める
「月末になると、タイムカードとExcelの突き合わせで半日消える」「有給の残り日数を聞かれるたびに、その場で数え直す」。勤怠の集計は、毎月必ず来る作業だからこそ、少しの手間が積み重なります。ただ、ここでいきなり「どの打刻方法がよいか」から入ると外すことがあります。選ぶ製品と月額が変わるのは、打刻方法より先にある「給与計算とどうつなぐか」だからです。
この記事では、製品を比べる前に決めることを、5つに絞って整理します。
先に結論 — 決める順番はこの5つ
- 給与計算と連動させるかどうかを決める
- 勤務パターンと、手作業になっている箇所を書き出す
- 有給・シフトなど、自社の「例外」を洗い出す
- 費用を抑えたプランから、小さく試す
- 専門家に相談すべき線引きを確認する
各項目には「最初の一手」と「完了の目安」を付けました。
決めることの5つ
1給与計算と連動させるかどうかを決める
勤怠管理の先には、必ず給与計算があります。この2つをつなぐかどうかで、選ぶ製品も月額も変わります。
- 連動させる:勤怠の集計結果が給与計算にそのまま流れる。出勤簿の転記がなくなり、月末の作業は「確認」中心になる。給与と一体になったサービスや、連携機能のある組み合わせを選ぶことになる
- 連動させない:勤怠の集計だけを仕組み化し、結果はExcel等で給与側へ渡す。製品の選択肢は広く、費用も抑えやすいが、渡す作業と転記の確認は残る
給与計算を税理士や社労士に任せている会社は、その渡し方も含めて決めます。「集計したデータを、どの形式で渡せばよいか」を先方に聞くだけで、選ぶべき範囲が見えてきます。会計・給与の記事とも共通する考え方です。
いま給与計算を誰が・どうやって行っているかを確認し、連動させるかどうかを仮決めする
「連動させる/させない」と、その理由が1文で言える
2勤務パターンと、手作業になっている箇所を書き出す
次に、自社の勤務の実態と、手作業の場所を書き出します。
- 勤務パターン:全員同じ時間帯か、交代制やシフトがあるか。直行直帰や現場作業はあるか
- 打刻の現状:タイムカード/Excel/手書きのどれで、誰が集計しているか
- 手作業の箇所:残業時間の集計、有給の残日数の管理、打刻漏れの確認、給与側への転記
打刻方法(カード/スマートフォン/ICカード等)の比較は、この書き出しの後です。たとえば直行直帰が多い会社なら、外出先で打刻できることが条件になりますし、全員が同じ事務所に出社する会社なら、凝った仕組みは要りません。条件が先、方法は後。これが順番です。
先月の集計作業を思い出し、手作業だった箇所を3つ書き出す
勤務パターンと手作業の箇所が一覧になっていて、打刻に求める条件が言える
3有給・シフトなど、自社の「例外」を洗い出す
勤怠の仕組みでつまずくのは、普段の出退勤ではなく例外の処理です。導入前に、次のような自社の例外を書き出しておきます。
- 有給休暇の管理(年10日以上付与される社員には年5日の取得が義務づけられています。残日数を聞かれるたびに数える運用は早めに卒業したいところです)
- 半日単位・時間単位の休暇があるか
- シフトの組み方(固定か、月ごとに組むか)と、締め日・支給日のサイクル
- 残業の申請と承認を、事前に取る運用かどうか
例外が多いこと自体は悪いことではありません。ただ、費用を抑えたプランでは例外の扱いに制限がある場合があるので、「自社の例外がそのプランで回るか」を先に確かめる必要があります。ここを飛ばすと、導入後に「この勤務形態は対象外だった」となります。
例外に当たるものを思いつく限り書き出し、優先度の高いものから3つ選ぶ
候補プランに当てはめて確認すべき例外が、3つ以内に絞れている
4費用を抑えたプランから、小さく試す
勤務形態が単純な会社は、高機能なプランから始める理由はあまりありません。費用を抑えたプランで、まず「集計が定型手順になるか」を確かめるのが向いています。
試し方のコツは次の3つです。
- 試用期間があれば、月末の集計が実際に含まれる時期に試す(普段の日の操作感だけでは判断できません)
- 最初は部署や拠点を絞って始め、例外の処理が回るかを確認してから広げる
- 費用は初期費用とランニングコスト(月額×12か月=1年分)に分けて見る。勤怠は従業員1人あたりの月額で課金されるプランが多く、人数×12か月の総額で見ると判断しやすくなります
金額は製品・プラン・人数で変わるため、この記事では断定しません。候補の公式ページで単価と課金の条件を確認し、1年総額に直して比べてください。
候補を2つに絞り、「初期費用」と「1人あたり月額×人数×12か月」を公式ページで確認する
候補ごとに1年総額が出ていて、試す範囲(部署・期間)が決まっている
勤務形態が単純で、例外も少ない会社。費用を抑えたプランの直販で小さく試せます
次の項目5に当てはまる会社
5専門家に相談すべき線引きを確認する
勤怠ツールは「記録と集計」の道具であって、勤務ルールそのものを決める道具ではありません。次のような場合は、ツールを選ぶ前に、労務の専門家(社労士等)とセットで考える方が安全です。
- 変形労働時間制やフレックスタイムなど、勤務時間の制度自体が複雑
- 就業規則と実際の運用がずれている(残業の扱い、休日の定義など)
- シフトや手当の種類が多く、「どの働き方にどの手当か」の整理から必要な状態
この線を越えたままツールだけ入れると、間違ったルールで集計が自動化されてしまいます。ツール選びと制度の整理は、順番を分けて考えるのが安全です。
上記に当てはまるものがあるかをチェックする
「ツールで解決する範囲」と「専門家に相談する範囲」が分かれている
後回しでよいこと(最初は)
- 打刻方法の細かい比較(連動の有無と勤務パターンが決まれば、候補は自然に絞れます)
- 給与明細の電子化や年末調整まで含めた一括の入れ替え(集計の型ができてから広げても遅くありません)
- 全社一斉の切り替え(小さく試して例外の処理を確認してからで十分です)
ただし、集計ミスが給与の支給額に影響している場合は、後回しにせず、先に専門家へ相談してください。
まとめのチェック
- 給与計算と連動させるかどうかが決まっている
- 勤務パターンと、手作業になっている箇所を書き出した
- 自社の例外(有給・シフト・残業の扱い)を洗い出した
- 候補の費用を、初期費用と月額×12か月に分けて比べた
- 専門家に相談する範囲と、ツールで解決する範囲を分けた
よくある質問
打刻はどの方法が一番よいですか?
会社ごとに違います。全員が事務所に出社する会社と、直行直帰や現場作業が多い会社では、条件が正反対になるからです。勤務パターンと手作業の箇所を書き出してから方法を選ぶと、外しにくくなります。
Excelの集計のままでも問題ないですか?
人数が少なく勤務形態も単純なら、回っている間は問題ありません。ただし集計できる人が1人だけの状態は、その人が休むと止まる弱さがあります。属人化(特定の人にしかできない状態)しているかどうかが、見直しの判断材料です。
有給の管理だけ先に何とかしたいのですが。
有給の残日数管理は、勤怠の仕組みと相性のよい部分です。候補を比べるときの確認項目に入れてください。年5日の取得義務など制度面の判断は、社労士等の専門家にご確認ください。
費用はどのくらい見ればよいですか?
製品・プラン・人数で変わるため、この記事では金額を断定しません。候補の公式ページで1人あたり月額と初期費用を確認し、「かんたん費用計算」で従業員数を入れて1年総額に直して比べてください。
導入はどのタイミングがよいですか?
締め日の直前は避け、月の区切りから始めるのが無難です。試用期間を使う場合は、月末の集計作業が含まれる時期に当てることが判断の材料になります。
※ この記事にアフィリエイトリンクは含まれていません。挿入する場合は、リンク先を原則メーカー公式・公式ストアとし、近くにPR表記を置きます。労務そのものの判断は社労士等の専門家へご相談ください。